ジョジョのすゝめ番外編 デッドマンズQ

チェンソーマン買うために行った本屋でたまたま見つけました
死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集」。

この作品は、その名の通り荒木先生の短編集。

収録作品は「死刑執行中脱獄進行中」「ドルチ 〜ダイ・ハード・ザ・キャット〜」「岸辺露伴は動かない #16:懺悔室」「デッドマンズQ
このうち「懺悔室」「デッドマンズQ」の2つはジョジョ4部のスピンオフ。

今回初めてマジメにデッドマンズQを読んだので、記念に率直な感想などつらつらと述べていこうかと思う。

ジョジョ4部のネタバレを大いに含むので注意。




【ストーリー】
依頼を受け、人殺しや危険な調査を行うことを「仕事」とし、それに勤しむとある幽霊の話。
15年前の殺人犯や幽霊屋敷の調査にスポットが当てられる。

【キャラクター】
・主人公
 幽霊。一度死亡している。名前や生前大切にしていたことは覚えているものの、なぜ死んだのかを思い出せない。


・尼
 主人公に仕事を依頼する僧。第2話と第3話(最終話)のみ登場。
幽霊は人には見えないはずだが、何故か彼女には主人公の姿が見えている。



【ネタバレ含む色々】
一見第4部の要素はS市だけに見える。しかし、この主人公こそが4部の大きな特徴とも言える。

結論から言ってしまうと、今作品の主人公は「吉良吉影」だ。
吉良といえば、あの救急車やモナリザ、手をシュバチャプペロンペロンしてるあいつ。
今作品では、「死の記憶を持たない幽霊」として登場する。

死の記憶こそないが、根底は吉良である。その証拠に、死してなお穏やかな人生を送ることを望んでいる。
このことについては作者も言及しており、「死んだあとも心の平和を願っている吉良の精神的な成長」と述べている。

「すてきな青空だった」「最も重要なのはこのすてきな青空を眺めて移動することであり…」「それにしても素敵な青空だ」と全話で発言していることからも、平和を願う心が垣間見える。
「」
しかし、仕事柄ゆえに彼に平和が訪れることはない。犬に足を噛みちぎられたり敵に攻撃されやむなく左腕を落としたりと災難の連続。
仗助たちに見つかり平穏な人生を送ることのできなかった生前と同じように見えて、少し悲しくなってくる。
そのうえ好きな音楽すらも聞けないという始末。
作者ですら「悲しくなった」と言うほど。

しかしこの現状に不満を抱いている様子はなく、特に悪態をつくシーンは見られない(尼への愚痴を除き)。
なぜなら、彼は「自分が天国へ行けない」ことを悟っているから。
「仕事」を「生きがい」にしておけば幸福になれるかもしれない、ということを思いながら留まり続ける。
同じ「この世に留まり続けた幽霊」の鈴美とは違い、彼は天国へ行くことすらも許されない。

幽霊には「結界」という概念があり、幽霊は人間の作る結界に入れないため路上生活をする。吉良はその状況を打破したいらしいが、部屋を借りるには人間である必要がある。悲しいかな。

【感想】
杜王町から追放され、「私はどこへ行くんだ…?」という疑問を投げかけて死亡した吉良吉影
4部の後日譚としても楽しめるし、スピンオフとしても楽しめる。
吉良が死んでも平和を願うのは、彼なりの強い信念を感じた。
吉良本人がスタンドのような存在となってしまった。

騒がしい親子を「見えない」ことをいいことにぶちのめしたり、殺人鬼をギリギリ死なないくらいに痛めつけるという凄技。
生前の殺人衝動をある意味正当化できてるというのがまた皮肉っぽい。

荒木先生はこの作品を、「行動や思いをひたすら追い求めた作品」と語る。
荒木先生から度々好きなキャラとして名が挙がる吉良だが、彼の死後というのはやはり荒木先生しか書けない、と実感した。
Deadman’s Questions」という題名にもあるように、「吉良の疑問」も多く描かれていたように感じ、面白かった。

存在自体は知っていたが本格的に読んだことはなかったのでいい体験。

4部を見終えた人、吉良が大好きな人、予備知識がなくても楽しめてかつジョジョっぽい「キモチワルさ」を追い求めたいという人はぜひ読んでみてほしい。